アフロディーネロマンス 第9章
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創作上の存在を自身に纏い戦う存在「ガラテア」の一人であり、ドルオタでもある
ある日、ガラテアに襲われている少女を助けると、その少女は太一の推し、あっきーこと、
千晶に自作自演を疑われる太一だったが、直後、「死神」とでも呼ぶべきガラテアの襲撃を受けたことで、疑いが晴れる。
ある日、太一が家に帰宅しようとすると、そこに千晶が訪ねてきていたのだった。
千晶により詳細な事情を説明する太一、途中銀行強盗が発生し、ヒーローを自認する太一は即座に急行する。そこで再び死神の襲撃を受けるが、謎の干渉を受け、無事脱出に成功する。
自身が「死神」に狙われていると感じた千晶は太一に護衛を依頼するのだった。
「死神」以外からのガラテアにも狙われる千晶。やがて、二人はクエストという存在を知る。今後もガラテアに狙われると感じた千晶は太一を自身の事務所に手伝いとして大知を紹介することを決め、マネージャーのマーシーと顔をあわせる。
ハイパーループのチューブ上で、二人は千晶を狙うガラテア、
マーシー達と合流した一同は一路青森へ向かう。途中、千晶は様々な情報を調べ、疑念を得るが、仮眠を取ることにする。
仮眠中、
恵比寿との戦いで苦戦する太一だが、恵比寿からの教えを受けて、勝利する。
ついに青森で千晶のライブが始まる。そこへ再び「死神」が襲いかかる。サブユニットなる謎の装備を使いこなす「死神」に苦戦する太一だが、千晶が協力を要請していたことで駆けつけてきた豪士の助けを得て、撃退に成功するのだった。
青森から東京に帰ると、サブユニットとサブピグマリオンオーブが一般人の手に配られ始め、そして、アフロディーネゲームの開始が宣言される。
一方、クエストデバイスやサブユニットを使えないデバイスを持つ太一はアフロディーネゲームの運営から呼びつけられ、デバイスを改修してもらう。
帰り道、
『目の前の敵をにらむように見据える。刀を持つ両手に力がかかるのを感じる。ふいに、敵が動く』(『退魔師アンジェ』(著・メリーさんのアモル))
ニコニコと笑う陽光が杖を振るう。
ローブを纏い、イチイの果実を先端につけた杖を構えるその姿は、まるで『退魔師アンジェ』の世界からそっくり抜け出してきたかのようだ。
太一としては、悠長にルーンの完成を待つ理由はない。
「
一の太刀を構え、一気に陽光に肉薄する。
「魔術師相手には近接戦、そりゃそうなるよね」
完成した陽光のルーンから一本の刀が飛び出す。原作で英国の魔女が用いる刀
太一が振りかざす一の太刀と陽光の本庄正宗が鍔競り合う。
「へぇ、さすがは切断力そのものたる一の太刀。斬鉄剣じゃ切れないか!」
楽しげに陽光が笑う。
陽光はそのまま太一の刀を押す勢いを利用して後方に大きく飛び下がり、空中に浮かび上がった状態で、ルーンを描く。
陽光がケンのルーンとそれに重ねてウルズのルーンを描く、そしてそのすぐ右に半分重ねるようにしてイングズのルーン。
そして、イングズのルーンに指を添え、スマホのスワイプのように横に引っ張る。
「チッ、オートフィル・火炎追尾弾か」
直後、ケンのルーンとそれに重ねてウルズのルーンが無数に複製され、それらから一斉に火炎弾が放たれる。
――近すぎると処理し切れない!
太一は素早く判断し、後方に飛び下がって距離を取りつつ、無数に飛来する火炎弾を風の太刀で一つずつ切断していく。
その間に、陽光はさらにルーンを刻み、何かの魔術を発動しようとしている。
「『ヨブ記』40章16節より引用。
――くっそ……、このままじゃ……。
「いっくよー! 夜闇の翼の竜! 星の火を放て! 汝の名は……バハムート!」
魔法陣を中心に三つの緑の光がくるくると回転し、魔法陣から真っ黒な西洋のドラゴンが飛び出す。
真っ黒な西洋のドラゴン、バハムートが熱線を無数に放つ。
「くそ……」
太一は熱線を風の太刀で反らして防御しつつ、次の手を考える。
熱線を風の太刀で防げるのは僥倖だが、熱線は文字通り無数に飛んでくるため、集中して捌かなければ対処しきれない。しかし。
「守ってばかりじゃ勝てないよー!」
陽光の言葉のとおりである。陽光はさらに火炎弾を飛ばしてくる。数が少ない分精密に操作できるのか、こちらの死角を狙ってくる。
「こうなりゃ、一か八かだな!」
太一は思い切って、サブユニットをアフロディーネデバイスに差し込む。
《
そして、サブユニットに千晶から貰った白い土台のピグマリオンオーブを差し込む。
《ユピテル》
《no combo》
直後、ユピテルの、というよりは彼の操る
「行くぞ、ケラウノス!」
左手に雷そのものの如き槍、ケラウノスを出現させ、投擲する。
それは素早くバハムートに突き刺さり、バハムートを麻痺させる。
太一はその隙を逃さず、一気に地面を蹴る。
「
鋭い一の太刀による一撃がバハムートの胸元に突き刺さり、そして貫通する。
背後でバハムートが悲鳴を上げるのを確認しつつ、そのまま一気に陽光に迫る。
――デバイスを破壊すれば!
突きを継続し、一気に陽光の右腕に迫る。
ローブの袖に螺旋を描く一の太刀の先端が触れ、袖がちぎれる。
――デバイスが……ない!?
「はいそこまでー」
直後、突然後頭部に痛みが走り、体が痺れた。
地面にバタリと倒れるところを陽光に支えられる。
「悪いね、戦いが始まるより先に、麻痺させるルーンを刻んでたんだー」
ニンマリと陽光が笑う。
――まずい、殺される……。
「殺さないよー。ちょっと腕前が見たかっただけだもん」
怯える太一に陽光がニコニコと笑う。
「君さ、千晶ちゃんのボディーガードなんでしょ? 朝倉豪士君と、堺恵比寿君と一緒に守ってるんだよね? あの死神から、さ」
そこまで知ってるのか、と太一は焦りを覚える。自分の次はあっきーたちが狙われる、と。
「だから、殺さないってばー。あのね、私も仲間に入れてよ。千晶ちゃんに私のこと紹介してくれればいいからさ」
脅しのつもりか、と太一は考える。
――けど、こんな得体のしれない女性をあっきーに引き合わせるわけにはいかない。どう逃げる……。
「脅し、か。そっちの方が話を通しやすいならそういうことにしよっかー? 望んで引き合わせましたー、より、脅されて仕方なくー、の方が言い訳聞くもんねー」
相変わらず、陽光はにっこり笑顔だ。
――黙っていれば勝手なことを……。ってまて、さっきから黙ってるのに会話が成立してる?
「うん。表層意識はルーンで読ませてもらってるよー。それにしても、得体のしれない女性なんてひどいなー。ただのオタクだよ、ヒナタ好きでコスプレする程度の、ね」
――やはり、こいつ、心が読めるのか、まずいな……。
「何がまずい? 言ってみろ。とでも言ってほしいのかな?」
陽光は太一の思案に三十年ほど前に流行った作品のパロディで答えるが、太一は知らないので通じない。
「あ、これ通じない? あちゃー、恥ずかしいなー」
そう言って笑う陽光に対し、太一はなにも考えない事を徹底する。
「ありゃ、だんまり? 困ったなー。ルーンで無理矢理、とはしたくないんだけど」
だが、その強硬姿勢は陽光のその言葉で潰える。
――そんな事もできるのか。いや、しかし、ありえる。
見たところ、この陽光という少女は、ルーンをかなり使いこなしている。ヒナタが『退魔師アンジェ』で他人に行動を強制したシーンはないはずだが、出来ないとまでは断言出来ない。と太一は思った。
「でっしょー? ここは大人しく従っていざって時に反撃出来るようにしておくのが良いんじゃないかなー?」
太一が考えようと思っていたことを先読みするように、陽光がそう言って笑う。
「ところで、私、あんまり男の人って好きじゃないんだよね。そろそろ決めてくれないと支えるのやめちゃうよ」
どうやら冗談ではないことが目の奥に輝く剣呑な光で感じられる。そんなところまでヒナタと同じか。あるいは模倣していくうちに一緒になってしまったのか。
「分かった。千晶に会わせるよ。けど、向こうが良いって言わないと会えないぞ」
「うん、いいよいいよー」
ほい、と陽光が指を振ると麻痺が解け、そして、陽光が支えるのをやめる。
太一の体が地面へ倒れるのを再開し、太一は両手を突っ張ってそれを止める。
ニコニコと太一を見つめる陽光に、太一は一瞬、攻撃を検討するが、心を読まれていることを思い出し、大人しくスマートフォンを取り出す。
「もしもし? なにかあったの?」
一コールが終わるより早く、千晶が出てくれる。素早く出てくれた事実にちょっと感動しつつ、太一は申し訳無さそうに切り出す。
「すまん、負けた」
「なんですって!? 大丈夫なの? 救急車は?」
千晶は真っ先に自分の心配をしてくれる。なんと嬉しいことだろう。やはり申し訳無さそうに太一は続ける。
「命もオーブも無事だ。その代わり、相手はこっちのことを全部知ってた。千晶に会わせろと言っている」
「……いいわ、会いましょう」
「あっきー!?」
一瞬の沈黙の末、千晶は言った。断られると思っていた太一は思わず驚きを返す。
「あなたの命を差し出してまで身を護りたいと言えるほど、私の心は冷たくないの。そっちどこ? まだ電車に乗る前?」
「あ、あぁ」
感動で泣きそうになるのを堪えつつ、太一は応じる。
「なら、あなたの家で会いましょう。すぐに向かうわ」
通話が切れる。
「おっけー、君の家だね。その可能性は考えてたから、もうルーン張ってあるよ。行こっか」
ガシ、と陽光が太一の手を掴むと、同時、陽光が空中にルーンを描く。
瞬きをした次の瞬間、太一は自分の住むアパートの前にいた。
「転移のルーンか」
「うん、大したもんでしょ」
陽光がさっと手を離す。
「部屋で待っててもいいけど、まぁ、いざって時のことを考えるとここで待とっか。豪士君との戦いに部屋を巻き込んで、部屋を壊しちゃ悪いもんね」
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