未来を探して 第4章(後編)

by:tipa08   

 世界樹の“アドボラ”の拠点に帰還した“チハヤ”“ワカミヤ”は、その設備にて本格的な修理を開始した。
 応急修理の際はフェアリースーツを単純な宇宙用の作業服として活用して修理に参加したスミスとミアも、拠点での本格的な修理では手伝える事も少ないため、拠点内に設けられた居住スペースの休憩室にて、ゆったりと休んでいた。
「スミス君はここ初めてだっけ?」
「1、2回は来たような……」
 スミスの自室は“チハヤ”の艦内にあり、生活は艦内で完結することが多く、拠点の設備はなかなか利用していない。これは艦に自室を持つ者に共通する点で、この居住スペースを利用するのは、この拠点の防衛・警備ために置かれている戦闘員や整備・工作のためにいるメカニックが大半である。
 スミス達が今回こっちに来たのは、修理がかなりの規模であるため艦内で活動しながらという訳には行かなかったため、修理の終了まではこちらで待機することになっていたためである。
「しっかりとした住まいだねえ。これはどこから持ってきたの?」
 木目の壁紙が張られた壁を軽く手で叩きながら、マリンが尋ねる。
「んー、元は別荘用のステーションだったって言ってたような」
 ミアが少し考えながら発言する。宇宙に浮ぶ豪邸として、個人で宇宙ステーションを所有するという事は珍しい事ではない。地上で広大な土地を有するより管理が楽で、近所の物事も起こらないという点から好まれる存在である。
「輸送中の事故で破棄された物をジャンクとして引き取って改築しました」
 オラルドが質問に答える。
「別荘用ですか? だいぶチープな印象が・・・・・・」
 ぱっと見では木に見える壁紙の表面を撫でながらスミスが言う。その触感は壁材のそれであり、木目の壁紙の中には触感も実物に近づけた物がある事も考えるととても高級と感じるものではなかった。
「元の間取りじゃあ部屋が大きすぎるんで、壁を追加で設けたからな。追加の壁はだいぶチープだ」
「こことかは本物だよ」
 オラルドの説明に、ミアがスミスの撫でていた壁とは異なる壁面を撫でながら付け加える。
 別荘用ステーションを購入するのは大抵がそれなりの富豪であり、各部屋はそれなりの広さを持つ。しかし、“アドボラ”は権利擁護団体であるため、広い部屋に兵舎のようにベッドを並べるだけのプライベート等が無い居住スペースというわけにはいかず、この別荘用ステーションを居住スペースとして運用するためには多くの壁を設け、大量の個室を作り出す必要があったのだ。
「ちょっと勿体ないよね」
 ソファーに座り、足を全力で伸ばしながらミアがそう言う。
「そうだな。無理に区切ったから通常の居住スペースとしても少し不便だ」
 想定されていなかった水回りなどは特に苦労しており、割とよく止まったり漏れたりと生活する上でかなりの不便を強いられている。
「予算が出来たら、新しく作るのかな?」
 マリンがそう尋ねると、オラルドが頭を抱えながら漏れ出たような声で言う。
「修理が無ければ着手する予定だったんですがね」
 “アドボラ”はそれなりに規模があり、支援者もいる組織であるが予算は万年不足している。それに、安く戦力を調達するため中古の機材を導入したは良いが、整備の頻度が多くなり維持に逆に予算を使うという事態となっており、僅かな余剰は大規模な損耗の修理などに充てられ、なかなか物を変えられないのであった。
「あー、難しいね」
 給湯器を発見し、自分のコーヒーを用意しながらマリンが言う。
 そして、入れたコーヒーを一口含んでから、声を出す。
「よし、それじゃあ。研究所の情報を纏めようかな」
 マリンはタブレットを休憩室備え付けのモニターに接続し、いくつかの情報を表示させる。
「研究所の名前はベルフコム研究所。開設者の名前から取られているね。研究内容は“粒子”学。成果はまだなく、苦労しているみたい」
 モニターに窓からの見える惑星の写真、建物の写真が表示される。
「成果が無いと資金繰りには苦労するからね。その予算の無さから世界樹を生んだ訳だ」
 一般的に発電に使用される大型トリチウムリアクター等の核融合炉は、発電量こそ多いがコストは大変高い。あまり予算が無いベルフコム研究所はそれを導入する事が出来なかったが、粒子学の研究には多くの電力が必要となる。そのため、僅かな予算で少しずつ電力を確保するために、小規模な発電システムを多数持つ世界樹を生み出したのだ。
「んで、不審な点がいくつかある。まず、新機材が大量に搬入された点。しかも、それまでの研究内容では使わないはずの機材」
 大手輸送業者の伝票の控えや、機材の受注書などが表示される。
「えっと、新しい研究を始めたとかでは?」
「うん、その可能性もある。けど、予算不足の研究所が新研究を始める時は研究を公表してスポンサーを募ったりする事が多いの。ベルフコムの資金繰りが改善された様子は無いから募集しないのは不審だよね」
 スミスの素朴な疑問に返答しながらマリンは説明を続ける。
「あと、研究者の出入りが減った事。元から外から研究者が来ることは少なかったから来る人が全然いないのは不自然じゃないんだけど、ベルフコム所属の研究員の出張、研修の類も全く無くなった」
 研究者同士の情報の共有というのは、各専門分野だけを研究するだけでは発見できない物がある以上、非常に大切なものである。課題だと思っていた物が他の研究で乗り越えられるという事もありうる。
「確かにそれは不審ですね。調べる手段は?」
 オラルドがそう尋ねると、マリンはすぐに返事を返す。
「直接研究所を覗くのが一番なんだけど、それは断られたから別の手段」
 サリュアがスッとカバンから水筒のような筒を取り出しマリンに渡す。
「いくつか小型の観測機器を持ち込んだから、これで周囲を観察する。大規模な実験だったら何かしらの反応は拾えると思う」
 水筒のような筒の両端が伸びると片側から様々な観測機器が現れ、もう片側はアンテナに変化する。
「拾えなかったら?」
 それまで邪魔しちゃ悪いと端の方で水を飲んでいたミアが感じた疑問をそのまま口に出す。
「拾えなかったってのも情報だからね。大事、大事」
 その疑問に回答しつつ、マリンは観測機器を操作し元の筒に戻す。その元の形に戻った筒は素早くサリュアが回収した。
「サリュアちゃんは秘書さんなの?」
 その動きを見ていたミアがサリュアに近づきながら尋ねる。
「そんな感じですね。護衛も兼ねています」
 カバンに筒を収納しつつミアの方を見て答える。
「なるほどー」
 ミアはうんうんと頷き、いきなり拳を作るとサリュアに殴りかかる。
 それをサリュアは受け止め、その殴りかかった勢いを生かして、ミアを地面に倒す。
「確かに優秀な護衛さんだねえ」
 地面に転がりながら、ミアはそう呟く。
「格闘技の訓練もした方がいいかもしれないな。何かに使えるかもしれない」
 その様子を見てオラルドも呟く。フェアリースーツなら四肢が使えるから、格闘技を使う事は出来る。問題は何に使えるかどうかである。
「あ、面白そうだね」
 オラルドの呟きにマリンが反応する。
「話が脱線してますよ……」
 そうスミスが逸れ始めた話を元に戻そうとした時だった。
 いきなりサイレンが鳴り響くと、照明が非常用照明に切り替わり、休憩室は真っ赤に染まった。
「何事だ!」
 素早く動いたオラルドが入口近くにある受話器を掴み取り、そう尋ねる。
「所属不明の小型戦闘機? 了解した。総員戦闘配置を!」
 いくつかの受け答えを得て、オラルドは受話器を置く。
「ミア、スミス君。今すぐに“チハヤ”に向かってくれ。敵襲だ」
 そう二人に声をかけながら、オラルドは部屋を飛び出して廊下を駆けた。
「えっ、二人はどうするんですか?」
 スミスはマリンとサリュアは客人であるから、特別な対応が必要なのではないかと思ってそう尋ねた。
「いや大丈夫。こういう事はよくあるし、優秀な護衛はいるからね」
 マリンは娘であるサリュアを見ながらそう言う。その視線を受けてサリュアは声を発する。
「ええ、非常時のマニュアルは読んだ。母は私に任せて」
 サリュアは腰に付けた筒を手に取りながら、スミスをまっすぐと見つめる。
「分かった。それじゃ」
 その真剣な視線にスミスは軽い敬礼を返すと、廊下に出て、“チハヤ”を目指し駆けた。その後ろから気を付けてという二人の声が聞こえた。

 

= = = =

 

「敵の数は?」
岩石をくり抜き作られた拠点の指令室に飛び込むなりオラルドはオペレーターにそう尋ねた。
「少なくとも20。母機は確認できません」
小型戦闘機は主に大型機や艦艇を中心に運用される戦闘機である。母機の大きさによっては戦闘機の総数が変化する。母機の確認は急務であった。
「“チハヤ”“ワカミヤ”はまだ動かせないな。“アキツシマ”はどうか?」
「“アキツシマ”は戦闘配備完了とのこと。“ツアー”は物資搬入中でしばらく動けません」
湾口を管理するオペレーターがすぐに質問に答える。
「戦闘機はどうか?」
「基地所属のサルフィン10機とシアが緊急発進しました。艦載機隊は少なくとも20分後」
「油断しすぎたか」
“チハヤ”“ワカミヤ”の艦載機は、艦の重整備に合わせて総点検を行う事とし、その作業を始めてしまったため、出撃には時間を要する状態となっていた。これは敵襲などないという完全な油断からの判断であった。
「“アキツシマ”は出港、“アキツシマ”を中心に防衛ラインを構築する」
過去の失敗を反省するよりは今を考えたほうがよいと頭を軽く振ってから、オラルドは指示を出す。
「……それから、拠点は破棄する。各部署に通達」
発見された以上、拠点として使い続けるわけにはいかない。ある程度の防備はあるものの、隠れ家的な性質の強い拠点である。そうは言っても、長く隠れ家として用いていた拠点だ、オラルドは少しためらいながらその命令を下した。
「…了解です」
オペレーターも愛着のある拠点の破棄を通達することに抵抗があるのか少し反応が遅れる。
「WAの方はどうなってる?」
WA“ウェスタンアドミラリティ”は世界樹の警備を担当するPMCであり、この拠点周辺も警備範囲内であるため、何かしらの反応はあるはずだと、オラルドは確認した。
「先ほどから湾口内で事故があったという無線が流れています」
「サポートは望めないか」
WAは“アドボラ”の活動に好意的であり、“アドボラ”に対して間接的なサポートを行っている。母機の特定なら望めるのではないかとオラルドは期待していたが、それは不可能であるようだった。
「“アキツシマ”機関異常。出港できません」
いきなり飛び込んできた報告にある程度の落ち着きが生まれつつあった指令室を再び揺さぶる。
「防衛ラインは構築できんな……」
破棄する拠点であるが、ここにあるものはできる限り次の拠点に運びたい。そのためにはこの攻撃での拠点の被害は避けたいが、それは難しい事であった。
「敵機種を特定。QSF-40です」
「ハイドレーサーだと?」
機銃とミサイルを搭載したミサイルと呼ばれるその無人戦闘機は、内火艇用ハッチなどで運用可能であり、あらゆる艦艇に防空能力を持たせる目的で開発された機体である。
しかし、ほぼ使い捨てである事と、現状においてその必要がない事からGUFには少数配備しかされていない機体であった。
その機体を20という数で持ち出してくる事は考えられない。つまり、攻撃を行っている相手はGUFでは無いと考えられる。しかし、GUFの正規採用機、特にハッキングの懸念のあり、機密の強い無人機を運用できる組織など限られている。
「つまり、奴らか」 
オラルドは、拳を強く握った。

 

= = = =

 

  緊急発進することのできたサルフィンとシアは接近してくるハイドレーサーに対し正面から向かい合った。ハイドレーサーは機体を小型に収めるため、戦闘機としての性能はサルフィンと比べて低いが、流石に二倍となると荷が重い。
『後方にさらに10機を確認』
無線から差がさらに広がった事を告げる通信が入る。下唇を噛みながらシアはフェアリーガンを構え、敵の編隊に攻撃を加える。
「敵1を撃墜」
冷静に報告をしながら、シアは次の目標に向けて射撃をする。もう一機を撃墜した所で、敵が予想外に速い事に気付き、回避行動を交えながらの射撃に切り替える。
ハイドレーサーの編隊は、果敢に挑むサルフィンとシアを相手にせず、編隊を組んで拠点に向けて突撃を続ける。
ハイドレーサーは旋回銃を持つため、うかつに近づけば弾幕に晒される。サルフィンとシアが必死に迎撃に当たったものの、生き残った半数の10機が拠点に向けてミサイルを放ち、多数の爆炎が生まれる。
『外装に多数着弾。内部への被害はありません』
“アドボラ”の拠点は世界樹の破棄されて漂っているシャフトの内部に構築されている。ミサイルの多くはそのシャフトの外壁に命中した為、拠点への被害は発生しなかった。
「いやー、でも大分見通しが良くなったよ。次は不味いかも」
“チハヤ”で装備を整えたミアが、拠点側から声を発する。
外にいる迎撃機隊は、まだミサイルを持つ後方の編隊を遊撃しようと迎撃態勢を整えようとするが、ミサイルを放ち身軽になったハイドレーサーが牙を向く。
その攻撃に翻弄され、後方の編隊をほぼ攻撃できずに逃してしまう。
「10機、私達で落とせるだけ落とすよ!」
「はい!」
シャフトから飛び出したばかりのスミスとミアは、一切マークされていなかったため、接近する編隊に対して対応が可能であった。
二人はフェアリーガンを構えると、次々と粒子弾を敵編隊に送り込む。
「いやー、スミス君。大分当たるようになってきたねえ」
連続して高出力の粒子弾を生み出しながらミアは呑気にスミスに声を掛ける。
「経験…ですかね」
対するスミスは必死であった。スーツ内蔵の射撃コンピューターを活用するためには、粒子弾の速度を一定にしなくてはならない。スミスもかなり慣れて来ているものの、まだまだかなりの集中を要する状態であった。
二人の激しい攻撃によって、半数を撃墜したが、残りが拠点に向けてミサイルを発射する。
いくつかのミサイルは再び外壁に命中したが、半数以上が拠点内に侵入し炸裂する。
『3番ドッキングポートに直撃。6番から12番の発電システムダウン、補助発電起動します』
オペレーターの報告が伝えられ、それに合わせて、迎撃隊の指揮を執っていたシアが迎撃隊の状態を報告する。
「襲撃機は全機撃墜。こっちは2機が撃墜されて、3機が戦闘継続困難。残りも大小の損害あり」
『了解した。お前はどうだ?』
シアの報告に対して、オラルドが尋ねる。
「損傷無し、エネルギーもまだまだいける」
『では、スミスとミアと合流しそのまま迎撃を頼む』
シアはその指示を了承し、スミスとミアに向けて加速する。
スミスとミアも合流の為に加速し、三人はすぐに顔を合わせた。
「三人で戦うのって初めてかな?」
ミアがシアにハイタッチをしながらそう言う。
「ですね、一人は防衛で残しますから」
その疑問に答えつつ、スミスはハイドレーサーの母機を探すため、辺りを見渡す。
「ところで、敵っていったい誰なの?」
ミアもキョロキョロと辺りを見渡しながら、ふと尋ねる。
『“セントラルアース”の連中だ』
「“セントラルアース”?」
オラルドの回答に対して、スミスが首を傾げる。
『地球に住む、住んでいた人間こそ至高と考える連中の作り上げたPMCだ。議員の中にも思想に賛同している者がいるから、GUFしか持っていないような装備すら持ち、極めて強力な装備を有する』
人類が宇宙に進出し、他の知的生命体、環境に適応するために生み出された新人類が誕生する中で、人類至上主義思想は誕生した。
それは自分に無い者を持つ者への恐れだったのかもしれないし、自分とは違う存在を気味悪く思ったのかもしれない。最初の頃は、理由を考える事も出来たのだが、長い時を得て、とにかく人類が至高でありそれ以外は憎むべき存在であるという憎む理由も不確かな思考へと変化してしまっている。排斥を望むその考え方は、差別と闘うために作られた“アドボラ”と相容れない者であり、人類至上主義の先兵とでも言うべき“セントラルアース”はアドボラ最大の敵と言っても過言では無かった。
『敵16出現。方位は同じ』
解説を聞いていたスミスの耳にオペレーターの声が響き、戦闘中であった事を思い出す。
「やっぱり母機を叩かないとキリがないよー」
ミアがそう愚痴を漏らしながらフェアリーガンを構える。スミスとシアもそれに続くように構え、射撃を開始した。
敵は先ほどからと同じように、拠点への攻撃を重視しているのか三人に構わず拠点に突撃を続けた。そのため、三人は一方的に敵に対して射撃を加え六機を撃墜した。しかし、敵は突撃を止めず拠点に向けてミサイルを放つ。
「速い!」
敵からの射撃が無く、射撃に集中できる状況であったが多くの敵機を逃し、ミサイルを放たせてしまったスミスはそう叫びながら、身軽になりドックファイトに持ち込もうとする敵機を狙う。
『ミサイル着弾。四番倉庫に直撃。整備スペースにも着弾、出入り口が塞がれました』
被害報告がなされるがその報告は整備から復帰するサルフィンの到着がさらに遅れるという事を示していた。
「母機は何処!」
シアが叫びながら真横を通過したハイドレーサーに対して射撃し、撃墜する。
スミスは敵の速さに翻弄されながらも、落ち着いてスラスタを制御して攻撃を的確に回避し続ける。そして、回避の合間に放つ粒子弾で敵を撃墜する。
「次も来るのかな?」
そう言いながら、ミアが最後の一機を撃墜し、辺りを見回す。
『整備スペースからサルフィンを出すのは時間がかかりそうだ。まだ戦えるか?』
オラルドが三人にそう尋ねる。
「こちらシア。エネルギーがそろそろ切れる」
「私はまだいけるけど、そろそろ不味いかも」
「スミスです。問題ありません」
三人の報告を聞き、オラルドは短くため息のような息を吐いてから声を出す。
『苦しいな』
同じ規模の攻撃が続くのなら、次も対処できない可能性が高い。拠点の損害もかなり大きく、攻撃が続くのなら移動すら困難になるかもしれない。
「あ、見つけたよ。大型貨物船」
そんな時、ミアが母機とみられる不審な船を発見した。この宙域で大型の貨物船というのはほとんど見かけないし、何もない地点にも関わらず貨物室のハッチを開けている。
ミアは直ぐにフェアリーガンを構えるとその船を狙い、集中を高めて発射するために引き金を引いた。その時であった。
『まって、母機を撃っちゃダメ!』
ドアを勢いよく開ける音と、マリンの声が無線で響き渡る。
しかし、すでに発射された粒子弾は止まることなく、貨物船を貫き大きな損傷を与える。
「えっ。不味かった?」
ミアがそう無線機に対して言う。
『かなり、不味いかも』
マリンはそう短く返答した。被害を受けた貨物船は逃げるようにワープし、宙域を離脱した。

 

= = = =

 

「以上の事から、彼ら“アドボラ”が危険な組織である事は明らかである!」
地球にある宇宙連合の議会の壇上において、男が声を張り上げ主張する。
その後ろにある大型ホログラム装置には、大きく損傷した貨物船の姿が映し出され、被害についての情報が文字で示されている。
その情報には、その貨物船が多くの無人戦闘機を搭載していた事には触れられずただの民間貨物船であったと表示されており、それを攻撃した“アドボラ”の非道性を示す情報となっていた。
「それでは、“アドボラ”に対して、GUF憲章に基づく武力制圧を行う事について、議決を取ります」
議長がそう告げると、議場は静まり返り、議員は手元の投票装置によって意見を示す。
「賛成133、反対63。よって、GUFに対して、“アドボラ”に対する武力制圧を命じます」
集計が終わり、議長がそう告げると、一部の議員はニヤリと笑い、一部の議員が拳を握りしめた。多くの議員はこれまで“アドボラ”に対して消極的ながら好意的であり、放置する事を選択していたが、このような非道の証拠を見せつけられては討伐について賛成するしかない。“セントラルアース”とその後ろにいる人類至上主義議員による情報操作は成功したのだ。
こうして、世界最大の軍隊であるGUFが“アドボラ”討伐隊を編成し数日のうちに行動を起こす事が決定された。GUFの規模であれば、逃げ切る事は容易ではない。
もはや“アドボラ”は、風前の灯火であった。

 

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