未来を探して 第5章(後編)

by:tipa08   

 サーミルSS級。それは巨大な生物で、アレン・M・サマナー級を上回る大きさを持っていた。
 しかし、それで動揺するGUF艦隊では無かった。最も接近していた“シラヌイ”は主砲である127mm粒子砲をそのサーミルに向けて照準する。
「まて!」
 第11宙雷戦隊の戦隊司令官が通信機に向かって叫ぶ。しかし、“シラヌイ”は射撃を開始し、粒子弾がサーミルに向けて飛ぶ。
「粒子弾防護幕展開!」
 “フブキ”の各部からグレネードのような小さなものが次々と飛び出すと、炸裂しキラキラと光る粉の幕を展開する。それは嚮導駆逐艦に装備されている防御装備であり、粒子弾の粒子の結束を失わせる事で粒子弾の威力を減衰させると言う物であった。しかし、無差別に威力を減衰させるため、使用側の粒子砲も使用できなくなるという欠点もある。それでも使用したのは、敵の脅威をよく理解していたからであった。
 “シラヌイ”から放たれた6発の粒子弾はサーミルに近づくと、その向きを変え、結合し一つの粒子弾となり、“シラヌイ”に帰ってくる。
 その強力な粒子弾は防護幕で減衰したものの、“シラヌイ”の右舷を大きく損壊させる。
「粒子砲は使うな! 駆逐艦の主砲では相手に武器を与えるだけだ!」
 “フブキ”の両舷に装備されているミサイルランチャーから次々とミサイルが飛び出し、サーミルに向かって飛ぶ。うまく誘導されないそれらはサーミル周辺のデプリを粉々にするだけであったがそれで充分であった。
「ミサイルによる牽制を行いつつ離脱。各艦続け!」
 第11宙雷戦隊に所属する駆逐艦は“フブキ”のようにミサイルを撃ちながら離脱する。粉々になったデプリや爆炎に阻まれて、サーミルは宙雷戦隊に対して攻撃を行えず、宙雷戦隊は、無事に離脱を成功させた。

 

= = = =

 

 宙雷戦隊に襲い掛かったサーミルはGUFだけでなく“アドボラ”にも襲い掛かる。
 デプリに隠れていた三人を追い立てるように、細い軌跡を残す粒子弾が彼らを追う。
「こんなに離れてても曲げられるのすごいねー」
 ミアが呑気な口調で言いながら、スレスレで粒子弾を回避する。
 その粒子弾が方向を変え、スミスに向かって襲い掛かる。
 スミスはそれをスラスターの全力噴射による急転換で回避する。デプリに体をぶつけかけるが、シアがフォローに入り、何とか持ち直す。
「どうするの?」
 シアがデプリに向かいフェアリーガンを放ち、散らばった瓦礫で追ってくる粒子弾を減衰させる。
「とりあえずてったーい。私に続いてー」
 シアのようにデプリに向かって次々と攻撃し、視界を塞いでいく。
 そして、ミアを基準に三人は視界不良となった空間を抜け、“チハヤ”に向かって飛ぶ。
 幾つかの追撃はあったものの、突然ぱたりと攻撃は止んだ。
「GUFの方に興味が移ったみたいですね」
 落ち着いたスミスが、息を吐きながらそう言う。
「向こうは火力もあるし、数も多いからそうだといいなあ」
 ミアがそう返しながら、“チハヤ”の空いたハッチから艦内に入り、二人もそれに続き、着艦する。
 着艦して落ち着いて、状態を確認すると三人のフェアリースーツはかなり損傷していた。
「簡易整備で再出撃はできると思うけど」
 シアが外したフェアリースーツの破損部位を撫でるように触りながら呟く。
「少なくとも、あれと戦うのは難しいと思いますね」
 スミスも破損部位を確認しながら言う。機能的に大きな問題は無かったが、強敵と戦う際は万全で望まなければ足元を掬われてしまう。
「まあ、そうだろうな」
 整備甲板まで降りて来たオラルドがそれに同意する。
「あのサーミルが動いているからか、宙域の状態が安定していないらしい。ワープで逃げるのは無理だな」
 サーミルに気を取られているGUF艦隊から逃げる事は容易であったが、この宙域から通常の航法で離脱してしまえば、別の監視網に引っ掛かってしまい、この宙域に侵入する前に逆戻りだ。ワープが使えないという状態は“アドボラ”にとって手詰まりの状態であった。
「とりあえず、我々が出来る事は無い。状態が変化するまで身を潜める」
 駆逐艦の砲撃よりも強力な攻撃手段を持たない“アドボラ”がそれを防ぐサーミルに対して手を出す事は出来ない。GUF艦隊とサーミルとの戦いが終わるまで、様子を見るしかないのだった。
「戦い、どうなりますかね」
 スミスが尋ねる。
「SS級を撃破した記録はある。勝てない戦いではないと思うが……」
 窓から見える景色を見ながらオラルドが答える。その先では、いくつかの閃光が確認できた。

 

= = = =

 

「有砲身でも駄目か!」
 艦隊司令官が思わず叫ぶ。その目の前のモニターには、サーミルに向かって放たれた粒子弾が逸れる様子を映し出していた。
 有砲身粒子砲は、通常そのまま放出する粒子弾を砲身でさらに加速させ、威力を高める砲だ。ザードリア級の武装としては最も強力な装備であり、粒子砲の中でも上位の威力をもつ砲である。それが逸らされるというのはこの艦隊の火力では対抗が困難である事を示している。
「ミサイル斉射! 反撃させるな」
 “パラダイス”と三隻の主力艦の魚雷発射管とVLSから大量のミサイルが発射され、サーミルに向けて飛翔する。誘導されない為、一部はそれてしまうが、それでも並の艦艇なら対応しきれない量のミサイルである。
 しかし、大半はジグザグに飛び回る粒子弾が作り出した網によって無力化され、僅か数発のみが命中する。
 それによって有効なダメージが入ったようには見えないが、サーミルは少し後退する。
「今のうちに後退する」
 頭を押さえながら、艦隊司令官が指示を下す。
「増援申請行いました。明日には到着すると」
 通信を担当する士官が声を発する。
「遅い。それにすぐに来れるのは宙雷艦隊程度だろう」
 戦闘艦すら有する艦隊の火力が通用しないのに、数隻の駆逐艦が加わった位で状況が変化するとは到底思えない。
「いえ、騎兵隊がたまたま近くにいるとの事です」
「それならまだ頼りになるが……。明日まで持ちこたえられるかだな」
 騎兵隊は高速戦闘艦と高速主力艦で構築される高い機動力を持つ艦隊の愛称だ。その相性の示す通り、中世の騎兵隊のように、艦隊戦において敵側面の打撃や追撃を担当する艦隊だ。
 しかし、そもそもこの艦隊が明日まで残っているのか、という疑問があった。後退し、デプリに身を隠した事もあり、今は見失っているようだが、離脱なり行動を起こせば見つかる可能性は高まるし、たとえ動かなくても見つかる可能性はある。
「こちら第11宙雷戦隊から、艦隊司令官へ。意見よろしいでしょうか?」
 艦隊司令室の中心にホログラフで第11宙雷戦隊の司令官が投影される。
「許可する」
「“アドボラ”と合流してはいかがでしょう。現状が手詰まりなのは向こうも同じかと」
 その提案が出された瞬間、艦隊司令室にいる全員が艦隊司令官に視線を向け、司令官の声を待った。
「敵と共闘してはならないという項目は無いな」
 コンソールを操作し、“アドボラ”討伐命令の命令書を開きながら司令官が呟く。
「伝令を送る。使う機材は航空隊の指揮官に任せる」
 すこし間があって、艦長がその指示に了解を示し、航空隊の指揮官にそれを伝える。
「数分で準備できるそうです。それまでに文章をお願いします」
 司令官はああ、と短く回答し、コンソールを操作して“アドボラ”に送るメッセージの作成を始めた。

 

= = = =

 

「“アドボラ”討伐艦隊の指揮を取っています。ヴァルツと申します」
「“アドボラ”実働部隊の指揮を任されているオラルド・ステイツです。よろしくお願いしますヴァルツ大佐」
 GUF、“アドボラ”の両指揮官が、“パラダイス”の艦隊司令室で握手を交わす。
 二人だけではなく、第11、18宙雷戦隊の司令官も集まっている。
「では、さっそく本題に入りましょうか。あれをいかに撃退するか」
 司令室の中心にホログラフでサーミルSS級の姿が投影される。
「最高火力である有砲身粒子砲の四門斉射でも駄目でした。実弾武器類は消耗が激しく話になりません」
「艦載機は?」
 オラルドが尋ねる。
「被害は軽微でしたから、対艦装備で待機させています」
「こちらは予備機しか使えませんね。ファアリースーツは損傷こそあれ問題ありません」
 お互いに与え合った損害であるため、お互い少し顔が引き攣るが話は進む。
「前例だと、ザードリア級の射撃も有効であったと報告されていますが」
「なにかしらの力が働かなくとも曲がってしまうこの環境によって強化されているか、もしくは強力な個体であるのか……」
 二人が考察を述べる。その会話に割り込むように一人の女性が声を出す。
「そういう考察なら私にお任せ!」
 “ワカミヤ”に乗って逃げずにこっそりと“チハヤ”に潜んでいたマリンであった。
「リーフェリット博士!」
 オラルドと第11宙雷戦隊の司令官が反応する。そしてお互いに顔を見合わせて、お互いの苦労を感じた。周りはその二人の声で、この人が、なぜ? と少し騒がしくなる。
「個体としては同等、能力が強いのは環境のせいだね。根拠はあるけど、今は割愛」
 マリンはコンソールに自分のタブレットから伸ばしたコードをつなぎ、ホログラムの出力機にアクセスする。
「あれにダメージを与えるために必要な粒子弾は、最新鋭のオセアニア級の艦首砲じゃないと無理だね。でも、その出力の粒子弾を生み出す方法がある」
 ホログラムでいくつかの箱が投影され、マリンが説明を始める。
「まず“パラダイス”と三隻の主力艦“カレー”“アテネ”“ニューキョウト”の主砲を一点に集中させて、強力なエネルギーを生み出す」
 ホログラフの四つの箱から線が伸びて一点に集中する。
「クラスターショットでは火力が足りないように思いますが……」
 大佐の疑問を待っていましたと言わんばかりにマリンが答える。
「これをフェアリースーツの三人に制御してもらって、撃ちます」
「はい!?」
 その一言にオラルドの護衛として同行していたスミスが思わず妙な声を出す。司令室の全員が視線を向けたがその視線はすぐにマリンに戻る。「といっても、とてつもないエネルギー量だから、三人だけじゃなくて“アキツシマ”のフィールドで補佐する形になる」
 幾つかの理論を示す数列が表示される。
「それは妨害されないのですか?」
 オラルドが尋ねる。
「いや、される。僅かな揺らぎでも三人の苦労がかなり増えて失敗の可能性が高まる」
 その発言を聞いた第18宙雷戦隊の司令官が手を上げながら発言する。
「では、我々が気を引きます。第11戦隊は先に奴と戦い損耗しており、我々の方が適任だと思います」
 実際、第11宙雷戦隊に比べて、正面で戦っていない第18宙雷戦隊は艦艇の損傷も、弾薬の消費も少ない。
「そうだな、第18戦隊に加えて、艦載機隊も突撃させる。うちのスタッフと部品を使えば“アドボラ”からも何機かは持ち出せないか?」
 大佐からそう尋ねられたオラルドは、リストを確認してからそれに答える。
「そうですね、そちらの支援があれば何機かは動かせると思います」
「ではそうしよう。艦長、航空隊の指揮官に連絡を」
 作戦に向けて次々と準備が進み始める。
「よし、スミス君達は私と打ち合わせね! 大丈夫、難しくないよ!」
 そう言うとマリンは空いている個室の場所を尋ね、艦隊司令室を出る。スミスは、不安を感じながらもミアとシアに通信を取って二人に合流を頼み、マリンに続いた。

 

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「時間か」
 第18宙雷戦隊の司令官が“ジョン・ポール・ジョーンズ”の艦橋で声を出す。
「所属艦及び、“ヴァンパイア”“アキヅキ”艦載機隊に問題無しです」
 第18宙雷戦隊の駆逐艦に第11宙雷戦隊から借り受けた駆逐艦。それに加えてGUF、“アドボラ”の両艦載機が陣形を整えて並ぶ。
「よし、敵を存分に引き付けるぞ! 全艦、及び艦載機隊突撃!!」
 その号令と共に、“ジョン・ポール・ジョーンズ”を先頭に六隻の駆逐艦、数十の艦載機が一斉に加速し、突撃を開始する。
 その動きにサーミルが気付き、周囲に多数の粒子弾を生成して次々と飛ばす。
「ありったけの火力を叩き込む。全砲門、ミサイルランチャー、撃て!」
 その攻撃に呼応するように、陽動部隊からの攻撃も始まる。駆逐艦は砲、ミサイルランチャー、魚雷発射管から次々と攻撃を放ち、艦載機隊は吊り下げた対艦、対宙の各種ミサイルを次々と放つ。
「“マハン”機関大破。“ユウグモ”左舷に直撃弾。共に離脱します」
「艦載機隊、攻撃を終了。牽制に移行します」
 次々と報告がなされる艦橋で司令官は少し唸る。
「さて、ここからが本番か」
 牽制のミサイルの数は減る一方で、敵は反撃に力を注げる状態となっている。ここからいかに、時間を稼ぐか、それが重要になってくる。
「艦隊各艦、陣形は崩しても構わない。回避を重視」

 

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「みんなー、問題無い?」
 フェアリースーツを着たスミス、ミア、シアの三人にマリンが通信で呼びかける。
「位置には着きました!」
 三人を代表してスミスが回答する。
「大丈夫、失敗しないって」
 その言い方から不安を感じ取ったマリンがスミスをフォローする。
「まあ、なんとかなるって」
 ミアがいつもと変わらない呑気な声で言う。
「陽動部隊に被害が出始めた。そろそろ始めよう」
 オラルドが言うと、“アキツシマ”が放熱板等、制御フィールドを展開するための装備を次々と展開する。その横には寄り添うように二隻の駆逐艦が停泊し、GUFの砲撃に対応し、ダウンしてから復旧しきれていない機能を補完していた、
「こちら“アテネ”照準良し」
「“ニューキョウト”問題無し」
「“パラダイス”いつでも撃てます」
「おっと、“カレー”もいけます」
 射撃を行う艦が次々と準備完了を報告する。スミス達の視界にも、サーミルの位置が表示される。
「“アキツシマ”制御フィールド安定。“シラヌイ”“ロングソード”とのエネルギーバイパス、熱交換システムに異常無し」
 すべて用意は整った。あとはやってみるしか無い状態となった。
「最終確認。三人とも大丈夫?」
 マリンがそう尋ねる。
「ミア、たぶんいけるよー」
「シア、問題ありません」
 二人は制御に集中するためフェアリーガンを背中に回し、手を前方に突き出す。スミスは一呼吸置いてから、返事をする。
「スミス、大丈夫です」
 スミスもフェアリーガンを下げ、手を伸ばす。
「よし、カウントダウンに入るよ」
 そう言うと同時に、スミスの視界に片隅に10と表示され、9、8とカウントダウンが始まる。意識を集中させ、サーミル目掛けて巨大なエネルギーを飛ばすイメージを固める。
「5秒前、全工程に異常無し」
 カウントが続き、そして0になる。
「主砲、発射」
 四隻の発揮可能な最大火力が一点に向けて発射され、多数の粒子弾が衝突し、“粒子”同士の反発によって、高速度の“粒子”がさらに加速し周囲に散らばろうとする。それを、制御フィールドと三人の力が押しとどめ、サーミルのいる方向にのみ流れるように制御する。
 三人は膨大なエネルギーに翻弄されながらも、何とか制御を保ちエネルギーの方向を制御する事が出来た。
 巨大なエネルギーは巨大な粒子弾となり、サーミルに向かって多くのデプリを破壊しながら一直線に向かう。
 サーミルはその巨大なエネルギーに気付いたようだったが、その巨大なエネルギーを逸らす事が出来ず、巨体をくねらせ回避を試みる事しかできないようであった。
 サーミルに直撃した粒子弾は辺りに強力な閃光をまき散らし、その場にいる者多くの視界は塞がれた。
「どうなった?」
 大佐が目をつぶりながら誰かに訪ねる。
「詳細不明です。観測機器も膨大なエネルギーの影響で正常な数値が出ません」
「通信も駄目です。陽動艦隊、観測班共に連絡取れません」
 モニターを見ていたおかげで閃光によって視界を奪われなかった士官が情報を伝える。
「三人は?」
 少し回復した視界で外を見ながらマリンが尋ねる。
「視界が回復していないのか、漂っているが動きはある」
 視界の回復が早かったオラルドが答える。三人は手で顔を覆いながら漂っているが、かすかに四肢に動きがある。命に別状はないようだった。
「通信回復。サーミルはまだ生きています!」
 閃光の混乱から立ち直りつつあった司令室に声が響く。
「なんだと、あれだけの攻撃を食らってか!」
 大佐がそれを告げた士官の見つめるモニターをのぞき込む。
「体の一部は失っていますが、活動を続けています」
 観測班の映像がモニターに表示される。その巨体の3分の1は失われていたがその体は大きく動いている。
「どうすれば?」
 閃光から立ち直ったスミスが尋ねる。
「“アキツシマ”のフィールド再起動は時間がかかる。さっきのをもう一回ってのは難しいね」
 マリンが答える。
「能力は低下しているはずだ、攻撃用意」
 大佐が指示を下すと同時に、“パラダイス”のメインエンジンが噴射を開始し、前進を開始する。
「ん? ちょっと待って」
 ミアが声を出す。戦闘に備え、通信量が増える前にその声は無線に乗り、多くの者の耳に届く。
「どうした?」
 オラルドが尋ねる。
「サーミルが何かを言ってるんだよ。一緒に帰りたい、連れ帰りたいか、なんかそんな話を」
 それを聞いたほとんどの者が顔をしかめる。サーミルが喋るという話は報告された事はないし、もし喋っているなら、もっと近場の誰かも聞こえていいはずであり、ミアの言葉を真面目に受け止める者は少なかった。
「“粒子”の波動で話すんじゃないかって話はあったね。スミス君とシアちゃんはどう?」
 マリンの声を聞いてスミスとシアも目をつぶって集中してみる。すると、たしかに“迎えに行くだけなのに”“帰えりたいだけなのに”と言った頭に直接響くように声が聞こえる。
「聞こえます、内容は同じです」
「はい、私も」
 聞こえているという事を伝えると、艦隊の動きが止まる。声に対しての対応を決めた方がよいと大佐が判断した結果である。
「帰りたい? 迎えに行く? どういう事だ?」
 大佐が声を出す。すると、艦隊司令室に座る一人の士官が呟く。
「そういえば、大抵、彼らは死体を残しませんね」
 その呟きに司令室の全員の視線が向き、それで思い出したのか、別の士官が言う。
「死体を研究の為に収容した機関は必ず襲撃されており、サーミルは仲間の死体を回収する性質があるのではないかという指摘がありませんでしたか?」
 その声にマリンが答える。
「そうだね、収容出来た例自体少ないから偶然の可能性もあると放置されてたけど、その声がサーミルの声なら、本当にそうなのかもしれない」
 会話を聞いていたミアが提案をする。
「じゃあ、私が連れ帰りますって言ったら帰ってくれるんじゃない?」
 その提案にオラルドが突っ込みを入れる。
「いや、どうやって会話するんだ?」
 その冷静な突っ込みにたいして、ミアが答える。
「粒子操作は意識が大事なんだから、気合で何とかなるよ!」
 それを言い終えると、ミアは完全な宇宙空間で使われる事は少ない外部スピーカーを起動させて、思いっきり声を出す。すると、宇宙空間であるため、無線以外で聞こえるはずの無い声が、スミスとシアの頭の中に響く。
“私が連れて帰るよ!”
“誰?”
 それに対するサーミルらしき回答も聞こえる。
「会話できていますね」
 少し唖然としながら、スミスが無線に報告する。
「…本当か?」
 その会話をキャッチできない司令室にどう伝えようかとスミスが悩んでいるうちにも会話は進んでいく。
“誰かはともかく、私に任せれば大丈夫、その子は何処?”
“え、え?”
 スミスはあの図体で困惑しているのは少し不思議だなと感じつつ、無線に会話の内容をそのまま流す。
“なにかしらの方法で示したら分かる!”
“分かった”
 分かったと声が三人に響くと同時に、強く輝く細い線がサーミルから伸びる。
“あっちだね、任せて!”
“お願い”
“邪魔しちゃったからね。気にしないでー”
 会話が終わると、サーミルSS級は何処かやってきた数体の中型のサーミルに寄り添われながら離脱していく。
「あ、どこで合流するか決め忘れた」
 ミアが無線に漏らす。
「それは後で考えればいいさ、そんな事より場所だ」
 オラルドが苦笑しながら答える。
「光線の先にある惑星やデプリベルトをピックアップしました」
 その声と同時に、ホログラフでいくつかの情報が表示される。
 その中に全員が見覚えのある惑星が表示されていた。それは、世界樹があり、“アドボラ”の拠点があった惑星である。
「まさか研究所の動きにサーミルの死体が関わっている?」
 マリンの呟きに、端末で何かを見ながら大佐が答える。
「そうかもしれませんな。あなた方の拠点に残してきた海兵隊が研究所で不審な動きがあると言っています」
 大佐は端末を置き、艦長に進路の変更を指示してから、オラルドの方を向く。
「我々は世界樹に向かいます」
 その言葉にオラルドが答える。
「では、我々も同行します。共同戦線はサーミルの問題を解決するまでですから」
 それを聞くと、大佐は少し笑うと艦隊に指示を下した。
「全艦合流。艦載機の収容急げ。これより当艦隊は世界樹に向けて進路を取る!」

 

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